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[拾壱]
「そう言えば、金田さんは『機を見るに敏』ていわれて、藤崎さんは『機を見ずに不憫』って言われていたわ」
と笑いながら大迫さんは言った。
それを聞いて安藤さんが大笑いした。
「なんだぁ?うまいこと言うねえ」
安藤さんはこのフレーズがとても気に入ったようだった。
「でしょう?あの人にオンオフとかプライベートとオフィシャルなんて区別ないですからね。いつも一緒。誰に対しても一緒。態度も変えませんからね。いつも上司に睨まれていましたよ。だからいつも不憫な目にあってました。」
「だろうなあ。」
そこは安藤さんも納得しているようだった。
「だからストレスなんてなかったと思いますよ」
大迫さんがそういった瞬間、ドアが勢いよく開いてカウベルが鳴った。
「暑い!暑い!溶けそうや。安ちゃんビールくれぇ!!」
と飛び込んできたのは機を見ずに不憫な人と言われたオヤジだった。
「ご無沙汰してます。」
大迫さんはオヤジが入ってきた瞬間に立ち上がって挨拶をした。
「おお?たしかぁ鬼瓦権蔵君だったけぇ?う~ん。あの安藤君に小学校時代に毎日カツアゲされていたあの鬼瓦くんか!?」
と、唐突に訳の分からん事をオヤジは言い出したが
「はい。安藤さんに毎日カツアゲを食らっていた鬼瓦権蔵です」
と普通に大迫さんも応えていた。
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