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[拾弐]
「あほ、俺はそんな事せえへんし、鬼瓦なんて後輩もおらん。」
と普通に冷静に安藤さんは応えていた。
このオヤジの訳の分からん突っ込みとギャグに、普通に対応できる大迫さんを僕は凄いと尊敬した。
「元気やったかぁ!大迫ぉ~」
オヤジは嬉しそうに大迫さんの肩や背中を叩いていた。
「はい。なんとか生きてます。この前は嫁の相手をしてもらったみたいで、ありがとうございます。」
「ああ、愛ちゃんな。元気そうやったわ。相変わらずの別嬪さんやったなぁ。」
「ありがとうございます。嫁に言っときますわ。」
「どうしたんや?仕事か?……あ、安ちゃん俺とこいつにビールな。」
そう言うとオヤジと大迫さんはカウンターに並んで座った。
「ええ。ちょっとこっちに寄る事があったもんで、せっかくだから寄らせてもらいました。藤崎さんも珍しく仕事していたんですか?」
大迫さんがオヤジにそう聞いたが、そう言えば今日のオヤジはいつもと違う。
無精ひげに限りなく近いあごひげはそのままだが、いつもの短パンアロハではなくチノパンにJプレスの薄いピンクのボタンダウン姿だった。
オヤジの短パン以外の格好を始めて見たかもしれない。
昔のオヤジはこんな格好で仕事をしていたんだろうなと思うと、もう少し見ていたいような気がした。
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