第5章 部下

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[拾弐] 「あほ、俺はそんな事せえへんし、鬼瓦なんて後輩もおらん。」 と普通に冷静に安藤さんは応えていた。 このオヤジの訳の分からん突っ込みとギャグに、普通に対応できる大迫さんを僕は凄いと尊敬した。 「元気やったかぁ!大迫ぉ~」 オヤジは嬉しそうに大迫さんの肩や背中を叩いていた。 「はい。なんとか生きてます。この前は嫁の相手をしてもらったみたいで、ありがとうございます。」 「ああ、愛ちゃんな。元気そうやったわ。相変わらずの別嬪さんやったなぁ。」 「ありがとうございます。嫁に言っときますわ。」 「どうしたんや?仕事か?……あ、安ちゃん俺とこいつにビールな。」 そう言うとオヤジと大迫さんはカウンターに並んで座った。 「ええ。ちょっとこっちに寄る事があったもんで、せっかくだから寄らせてもらいました。藤崎さんも珍しく仕事していたんですか?」 大迫さんがオヤジにそう聞いたが、そう言えば今日のオヤジはいつもと違う。 無精ひげに限りなく近いあごひげはそのままだが、いつもの短パンアロハではなくチノパンにJプレスの薄いピンクのボタンダウン姿だった。 オヤジの短パン以外の格好を始めて見たかもしれない。 昔のオヤジはこんな格好で仕事をしていたんだろうなと思うと、もう少し見ていたいような気がした。
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