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[拾四]
「アホやな。さっさとビールを飲まなかった君の判断が敗因やな。」
「はい。そうです。」
大迫さんは何故か嬉しそうに応えていた。
久しぶりにオヤジと話ができて大迫さんはとても嬉しいようだ。
「ところで、お前のとこの仕事は順調か?」
「まあ、なんとか食えてます。」
「そりゃよかったな。食えることが一番や」
「大将はもう会社を起こさないんですか?」
「会社かぁ……やらんな。やる必要がない。」
「なんか勿体ないですねえ……。大将がこのまま埋もれるのは……」
「勿体無い事なんかあるかいな。俺ぐらいの人間ならその辺に掃いて捨てるほどおるわ。それにな。天の時、地の利、人の輪。何を取ってもその時にあらずやな。」
「そうですかねえ……。いつでもみんな馳せ参じると思いますけどね。」
「起業だけなら誰でも出来る。けどな、それからが問題や。」
オヤジはそういうと頭をかいた。
「大迫君、今の一平に何を言ってもアカンで。コイツはもうその日暮らしの生活に満足しているからな。ぬるま湯からは出んわ。」
安藤さんが横から口を挟んだ。
「流石やな。よう分かってはるわ。このオッサン。」
オヤジが笑いながらそう言いてビールをまた一気に飲んだ。
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