第1章 父さんの色

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[壱]  それは突然の話だった。 「お前、父さんに会いたい?」  高校の入学式当日。家に帰ってきて学生服から私服に着替えてリビングで甘ったるい紅茶を飲んでいたら、マイセンの珈琲カップで焼酎のロックを飲んでいたオフクロが僕に言った。  僕はこの母親の事をガサツな母親だ……と思っているが他の人は「個性的な人だ」という。「それが魅力だ」ともいう。  そんな外面(そとづら)の良いガサツな母親から逃げたかったのか嫌気がさしたのか、オヤジは僕が生まれて間もなく出て行った。そう、二人は離婚した。
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