13人が本棚に入れています
本棚に追加
「判った……でも、今日が終わるころには答えが出るはずだ」
そう云って、天野は笑った。
そんなわけない。好きだけど、男同士でっていうのは不自然だし、可笑しいよ。そう思いながら一緒に過ごすドライブデート。
見晴らしのいい高原の中にある丘の上、満足なほど贅沢な食事、たわいのない会話。すべてが仕事とは違うかけ離れたプライベートな一面を見せつけられた。彰もまんざら嫌ではなく、むしろ楽しんでしまった。
それが狙いだったのかわからないが、待ち合わせ場所ではなく自宅近くまでやってくる。その最後の信号待ちの合間に柔らかく啄まれ口づけをされた。
それからは会話もなく、彰だけが頬を染め心拍数が急上昇したまま車を降りた。
「き、今日は……ありがとうございました。あの……」
「またな、彰。楽しかった」
さっぱりとした会話に、爽やかな所に満足そうな笑みを浮かべて手を振る。そのまま、乾いたエンジン音を響かせてその場を後にした。
ぼんやりと行く先を見つめたまま、夢だったのかもしれないと云い聞かせて帰路に着いた。
明日からどうしよう。俺の方が普通ではいられなくなるかもしれない。そこを攻められたら、憧れや尊敬以上に深く純粋に好きになっちゃうよ。っていうか、もう好きなんですけど……課長っ、どうしてくれるんですか?
頭の中での葛藤虚しく、翌日から可愛がり方が尋常でなくなっていた。彰はただひやひやしながら、それでも心地よい温もりに奔走され続けていった。
〈 完 〉
最初のコメントを投稿しよう!