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僕はいつもこの季節に、この時間に殺されている気がする。死はとても近いものと知っていた。
遠い昔もこの季節に理不尽な世界から消された気がしてるんだ。
今よりすごい遠い国、国の争いがあった時。連れてこられた収容所に一筋の光と働き場所を求めて何時間も歩いた。すごい立派な建物で期待とやる気に満ち溢れて自分はもう戦争に関わらなくて良いのだと安心していた。敵国でも優しい人はいるのだと本当に思ったんだ。
親は戦争に殺されて妹と僕だけ。妹の手をギュッと握ってこれからの未来に笑いあった。
けどそれは直ぐに消えた。妹と離れ離れにさせられて泣いた妹はその場で殴り殺さた。僕は何も言えずに驚いて動けなくなった妹を抱きしめ、泣いた。
ほんの一瞬の事だったんだ。
何故か女はこっちだ
と大きな男に無理矢理に連れられそうになった。僕は妹の掴んだ手を離さなかった。
なんで?と言う前に妹が痛いと泣き出して…え?、あ…とか言ってる時に
握り拳を作った手が上から妹の首目掛けて落ちてきた。ドンッと鈍い音を響かせながら妹はだらりと動かなくなった。
ゴミみたいに捨てられる妹に近寄って譲って名前を呼ぶ。
うごかない
「なんで!なんでなんだ!!」
その時の僕は感情に任せて言葉を発した。相手を罵倒する言葉なんて出てこなくて、ただ相手を問いかける質問ばかりしたような気がする。
相手は何か言ってたけど、言葉がわからなかった。
これから一人でどうしろと言うのだ…。
一人で生きていたって何の意味もない、今まで妹がいるからと、頑張れてた思いが一気になくなり、心が死んだ。
お金も、働き先も、これからの未来も要らなくなった。ただ死を待つだけ…。
「おい、働け!」
ここに来てから暴力と働けという言葉だけを聞いた。何度暴力を振るわれても、働けと言われても、食事を与えられなくても…うずくまったまま動かなかった。連れてこられた部屋の隅でずっと。何もやる気にならない、早く殺せばいいとさえ思っていた。
早く家族の元へ行きたかった。
「なあ、一緒に働こうぜ?お前が働かなきゃ俺らの班の風当たりが強いんだ。」
同じ部屋のやつが話しかけてきた。そいつの顔も殴られて青あざばかりだったが、出された食をしっかり食べているからか自分の体にはない肉があった。
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