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「何になるんだ、何のために」
「いつか出れる、その日のためにさ!希望を失ってはダメだ。戦争は始まれば必ず終わる。いつかが必ずある。」
力強く言ったそいつの後ろに何人もの人がこちらを見て頷いているのが見えた。
「誰も、僕には誰もいない。生きる意味がない…生きていたくないんだ」
僕が発した言葉にも何人かが頷くのが見えた。同じように思いながら仕事をしている人がいたのに驚いた。
「生きているのに意味なんて必要か?そんなの考えながらお前は今まで生きていたか?辛いから意味が必要な生き方をするんだ。幸せだった時、お前は意味があって生きていたか?」
そう問いかけられて、幸せだった時を思い出した。優しいお母さんの手料理が美味しくて、かっこよくて尊敬できるお父さんみたいになりたくて、妹が可愛くて…ずっとこんな幸せな日が続くと思ってた。将来のことなんて、お父さんの仕事につくんだぐらいにしか思ってなかった。今生きている意味を探し始めたのは両親が亡くなった時かもしれない。
「お前が誰かに必要とされたいと思った時、生きる意味を探し始めるんだ。じゃなきゃ考えずに毎日を過ごせた。当たり前のように必要とされているからだ」
なぜかそいつの言葉がスーッと心に入る気がした。
「生きる意味なんて必要ないんだ。ただ今を一生懸命に生きて、死ぬ運命に時まで幸せを求めればいい。今辛くても生きていれば必ず良いことがある。その良いことを見つけられる心があれば。」
「こころ?」
「そうだ、感謝の気持ちを忘れたやつに幸福は見つけられない。俺は毎日殴られこき使われているが、飯が食える!このことに関してはここに感謝している。」
すごいと思った。こんなひどい境遇なのに感謝しているなんて…。
「僕は、妹を殺した奴がいるここの飯を食いたくない。妹を殺した奴がいるここで働きたくない。もう生きていたくないんだ。けど…死ぬ勇気はないから誰か殺してくれないかと待ってるんだ。」
心の底に眠っていた怒りを言葉にすると、妹を思い出して泣いた。
僕の思いを聞いたそいつは、眉間にシワをよせ怒った表情で力強く言った。
「ここにいる全員がそうだ!ここは敵国だぞ、お前は目の前で殺されたかもしれない!その場面、俺も見た。だが、ここは敵国だ!お前の両親を殺した奴も、俺の妻を殺した奴も皆同じ国のここの奴らだ!」
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