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「なぜ僕は今生きて、これから死ぬのですか?」
ふと、素直な疑問が口から出た。
「死ぬために生まれてきたのだ、生まれたから死ぬのだ。死ぬから生まれるのではない、生まれたからこそ死ぬのだ。」
「ではなぜ生まれたのですか」
「お前の場合は特殊だが、普通は生まれることは決まっている。誰かに影響を与えるため生まれる。例えそれが一瞬だとしても、その一瞬があるかないかで世界が大きく変わってしまうからだ」
僕は違うというところに引っかかった。
皆同じでは無いのだろうか?
「なぜ僕は特殊なんですか?」
「今日は話すのだな、いつも静かなのに…生きたくなったか」
ふっと鼻で笑いながらこちらを向いた。少し楽しそうだ。
「お前はお前のことを知ってるはずだ、お前は生まれていない。死は肉体が無くなったから死だと思うか?今や肉体が無くて意思だけが他へ移動出来る技術が発達しているのに。死ぬために生まれるのになぜ生まれながらにして死なない?死ぬために生まれたが、ただ死んでは生まれた意味がない、しっかりと意味を探し影響を周りに与えなければならない。」
段々と話を理解できなくなってきた。僕は生まれていない。では、なんなのだ?
生まれていないということは死ぬ事が出来ないということか?でも死ぬのだろ?どういう事だろう。
「お前は影響を与えてはいけない存在、そして生まれてはいない。お前の記憶はお前自身のものでは無い。クローンという言葉を知っているか。」
本を読むことしか暇つぶしがなかった僕はクローンという言葉を知っていた。
だけど、クローンを作ってはいけないことも知っていた。
「クローンは作れる。だが作ってはならない。だかな新たなる研究がなされた。固体から人間を作り出す。そして完成がお前だ、その体に実験台として電気信号化した知能、性格を埋め込んだ。いつ死ぬかわからぬ研究の完成系」
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