1367人が本棚に入れています
本棚に追加
言いながら、ハルクはガシガシと乱暴に頭を掻き出した。
しかしラインスは、その手を直ぐ様掴んで止める。
「……ラインス」
「ですから、何も貴方が独りで抱え込む必要はないのです。つらかったら誰かを頼ればいいし、愚痴を零してもいい。泣きたくなったら泣けばいい」
そしてその時、ハルクの一番近くに居るのは自分でありたい。
ラインスはそう願って止まなかった。それは彼の紛う方なき本心だ。
しかし、互いの立場を考えると実際、叶えるのは難しい事なのだろう。
「そんな事を言うのはお前だけだ」
「えっ?」
ラインスがそれを言おうか言うまいかと躊躇していると、おもむろにハルクが口を開いた。
「何でもない。さて、そろそろ城に戻るぞ。父に気付かれると面倒だからな」
そう言いながらハルクは、擦れ違い様ごつっとラインスの肩に軽く拳を入れて来た。表情は良く見えなかったが、口元に笑みが浮かんでいたのだけは解る。
何とか、多少なりとも、ではあるが、元気付ける事が出来たらしい。
「はっ」
と、一端礼はしたものの、ラインスはゲオルグの棺に再び目を向けた。
力を認めて欲しかったと――。
ラインスは、今は静かに眠っている王子の、努めて作られた表面しか見ていなかった事を後悔する。
ハルクは身勝手と言ったが。
ラインスは廟の中まで連れて来てもらい、そしてゲオルグの想いを知る事が出来――。
それに応えられなかった自分を悔やむ事が出来て、幸せだと思った。
「ちっ、また伸びて来たな」
廟を出、結界を掛け直したハルクは、真直ぐ花園に向かって行った。
そのままその場にしゃがみ込むと、手が汚れるのも構わず雑草をむしり始める。
もしや、この美しい花園を保っているのは。
ラインスは、思わず目の前の、背を丸める王女の肩に手を掛けた。
「ハルク様、まさか貴方がここの管理を?」
「ああ。……何だ、私が土いじりをしているのが可笑しいか?」
ごく最近の話ではあるのだが。
既にガイドの試験にお互い受かっており、そちらの依頼も後を断たない。
ラインスは未だ近衛騎士とガイドの兼業を続けており、忙殺される寸前である。王に頼み、人数の足りている騎士の方を休業しようと考えている位だ。
ハルクなど、王女である事を置いても地方の領主であったり、この砦の監督であったりと、彼以上に暇がない。
そしてガイドになってからは。
最初のコメントを投稿しよう!