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と、ハルクには何時もの憮然とした表情で返される。
「何でしょう?」
「迎えに来られても困る。お前が婿に来い」
ここでそこに突っ込むのか、とラインスは一度ガクッと頭を落としてしまったが。
一端ハルクから離れ、彼女の前に跪く。
そして今は片時も離さず腰に帯びている短剣を抜き、切っ先が天に向く様に構えた。
「必ず生きて戻ります。この剣に誓って」
――誓いの言葉など、騎士の叙勲を受ける度唱えて来たものだったが。こんな風に純粋な気持ちで口から出した事はなかったかもしれない。
ラインスは、視線を剣からハルクへと移した。
逆光も手伝う金の髪が眩しい。
美しい廟を背景にたたずむ彼女が一瞬、自身が信仰する女神と重なる。
目を細めて見上げる彼には、ハルクの姿がより神々しく見えてしまうのだった。
それは、思えば初めて会った時からそうで――。
「なるほど、節穴か」
「……何か言ったか?」
「いえ、何も」
孤高の騎士・完
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