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赤いパーカーをセーラー服の上から羽織りフードまで被った少女が、学校から家に帰ってきた。
「ただいま」
「あ、丁度いいわ。おばあちゃんのとこ持って行って」
ドアを開けるなり、目の前にいた女性と目が合い、少女は嫌そうな顔をする。
少女は茶の襟足が少し長いショートカットに眠そうな目が特徴。名前は八伽 紅音'やとぎ あかね'。17歳の高二。
無理矢理、持って行く物を押し付けられ、嫌々ながら自転車で行くことに。
自分の家から祖母の家まで自転車で30分程。しかし、途中林のような木々が多い所を通らなくてはならないので、好きになれなかった。しかし、母親が祖母の家に行ってこいという理由を紅音は知っている。
だから嫌々ながらも祖母の家に行くのだ。
紅音が林が嫌いなのは、動物が急に現れて危ないという話を聞いているから。ぶつかってしまうのが怖いのだ。
今日も無事に祖母の元へつくと、暫く時間を潰してから紅音は帰路につく。
「ただいま」
「おかえり、おばあちゃん…どうだった?喜んでいたでしょ?」
「あー、うん。
ねぇ、お母さん。暫く帰りは、ばあちゃんとこ寄るから」
「何かあったの?」
「あー、いや、ちょっとばあちゃんに頼んでいることあるから」
「そうなの…わかったわ。帰り気をつけるのよ」
「うん」
母親の様子が嬉しそうなものに変わり、紅音は母親にわからないように溜め息をつく。
八伽家は母子家庭。だから母親が女として生きることに否定はしたくないのだが、隠すのが下手でわからない振りするのも大変なのだ。
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