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そこへ騒ぎを聞き付けた剣士、僧侶、呪術使いが追い付いた。
勇者とは、オーガを挟む形で躍り出る。
「勇者さまっ」
僧侶が放った一言に、オーガはすかさず反応を示した。
攻撃体制にうつるのか、くわえていた豚肉に手をかけて噛みちぎる。
ボキボキボキ……と嫌な音が反響した。
巨大な顎が咀嚼する度、汚くおぞ気の立つ異音を放つ。
剣士はすかさず剣を構え、呪術使いも何かの詠唱に入った。
僧侶もサポートに入るが、オーガの後ろで立ち尽くす勇者が気になるらしい。
オーガは喉仏を下げつつ、飲み込むと、腐った匂いとともに咆哮をあげた。
手に持った肉を剣士たちに向けて投げ付ける。
彼らは難なく避けた。豚肉は建物の壁にヒビをいれるとそのまま地面におちる。
きちんと精肉されたものなので、血が飛び散ることはないが、弾かれた肉片と、オーガの体液が三人を汚した。
「こっち来るぞ!散開しろ!僧侶は回り込んで勇者の方へ行け!」
剣士は怒鳴ると、真っ直ぐ前へ踏み込んだ。
それを援護するように、呪術使いは火玉を生み出してはオーガへ飛ばす。
威力は小さいが、気を反らす程度には役に立つ。
そのうちにオーガと距離をとり、安全な場所で大技の準備をするのだ。
剣士は自分の間合いにオーガを捉えると、まず脛に一閃与える。そのまま足の間をくぐり抜け、振り返り様に脹ら脛へと斬り込んだ。
どちらも浅い。
それでも多少の痛みを感じたのか、オーガは剣士を追って上半身をひねった。
剣士はバックステップを踏んで、再び距離をとる。
剣を構えながら刃先を見ると、少し欠けていた。
多少手が痺れている。
硬い。
彼の更に数歩後ろに勇者は立っているが、剣士は彼は戦えないと踏んでいる。
恐らく自分の剣で切ることは出来ない。
何とか小手先でも時間を稼いで、呪術使いの術に賭けるしかない。
僧侶が勇者に合流すれば、彼女が彼を誘導するだろうから、少なくとも、それまで踏ん張る必要がある。
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