勇者やめます

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「おい!今度はこっちだぞ!」 剣士は声を張り上げてオーガを挑発する。 剣を逆手に持ち替え、オーガを中心に時計回りに走る。 丁度90度位の位置に来たところで急停止し、足元の小石を拾って投げ付けた。 普段から鍛練を欠かさない彼である。 相手が人間なら、これで致命傷を与えることも可能だ。 オーガと言えども、痛覚には通じるだろう。 石の一つがオーガの眉間を弾いた。 一瞬勇者に向きかけた体勢を、怒りとともに剣士へ向ける。 痺れる拳に剣を握りこみ、刀身を体で隠すように背後に構える。 腰を低く落として、重心をやや前に置いた。 自分の体が沸き立つのがわかる。血流が加速していき、神経がビリビリと少しの変化も逃さない。 瞳孔はきゅっと締まり、なのに不思議と呼吸は整う。
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