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「もおいやだぁぁぁおなかいたぁぁいいい」
宿の裏庭にある厠の前で、人だかりができていた。
それも、そうだろう。
この早朝に、板を組み合わせただけの簡易な小屋から、情けない悲鳴が聞こえるからである。
「わかった、わかったから」
ガタイの良い剣士風の男が、中にいる彼を宥める。
「ほんっとうに、申し訳ありませんっ」
「ただちに、ただちに!静かにさせますので!」
剣士と背中合わせに、一般客および宿関係者に平謝りしていたのは、呪術使いと僧侶のようだ。
彼らは中の人のツレらしい。
朝日が赤いからか、三人の顔色は夜闇を払うそれのように、赤々としていた。
その背後からは、途切れることなく絶望の叫びが駄々漏れしていた。
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