1/2
31人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ

「やぁっと来たか。おっせーな! 俺、めっちゃ腹へってんだぞ!」 「ちょ、顔見るなり何? それ、酷くない?」 「屋台で飯、食おうと思って夕飯抜いてるから腹ペコなんだよ。ほら、サクサク歩けよ、(りょう)」  涼、と名前を呼ばれた時には、もう手首を掴まれて引っ張られていた。  何よ。そりゃちょっと待ち合わせに遅れたけどさ。  でも今日の夏祭りの為に、すごく頑張ってオシャレしてきたのに!  浴衣だって、お母さんに頼んで蝶柄の可愛いのを新調したし。この日のために去年から髪も伸ばして、綺麗めのアップにしてきたし。  浴衣柄とお揃いの蝶の髪飾りも挿して、私的にはなかなかの出来になってるのに。  どこにも、なぁんにも触れてくれないで、ひと言もなしとか、酷いよ。  弟の(あつし)なんか、ウザいくらいベタベタ触って褒めてくれたってのに。  一番見てほしい(りゅう)がこんな態度だと、めちゃめちゃヘコむ。  はっ! もしかして私が浴衣着てるの、気づいてないとか?  ま、まずいわ。毎日会いすぎて普段着と浴衣の区別もついてないとかだったら、どうしようっ?  いえ、生まれた時からお隣さんで幼なじみのコイツなら、その心配も有り得るかも……。 「竜の、ばか」 「あ? 呼んだか?」 「呼んでない。ほら、お待ちかねの神社に着いたわよ。お腹いっぱい食べなさいよ!」 「うおっ!」  神社の石段に向けて突き飛ばしてやったわ。ふん、ざまーみろ。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!