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「恵留~!早く起きないと遅刻するわよ!!」
1階のリビングからは、母の急いた声で、夢の世界から強引に引き戻される。
僕は、まだこの心地よい温もりを手放す気にはなれず、母の呼びかけを聞かなかったことにし、
もうあと5分粘ろと試みた。だが母以外にもう一人の刺客が凄まじい勢いで僕の部屋へ突入してきたのである。
「めぐる~~早く起きないと、お姉ちゃんが全力で愛でちゃうよぉ~」
そう、刺客の正体は僕の姉である留美だった。留美は部屋へ突入してくるなり、僕の上へ盛大に
ダイブしてきたのである。
「ぐほぉっ・・・姉ちゃん、毎朝僕の上にダイブするのは禁止って言ったじゃんか。だし、今日のダイブはいつもに増して強烈なんだけど・・・。」
「だってぇ、今日は特別なんだよ!めぐちゃんと同じ高校に通えるんだよ!?もおお姉ちゃんは嬉しくてたまらなかったんだもん! それより、早くめぐちゃんの制服姿見たいな~あっ!それとも
お姉ちゃんの制服着る?きっとめぐちゃんのことだから、すっごい似合うし可愛いと思う!!」
始まったよ・・・姉ちゃんは自分で言うのもためらうが、僕のことが大好きすぎるのだ。だから僕のこととなるとわき目も振らずに一直線で突き進み、周囲が見えなくなってしまう。いわゆるブラコンというヤツだ。自分のことを好いてくれるのはとても嬉しいのだが、『限度』というものがある。
「なんで僕が姉ちゃんの制服を着なきゃなのさ。僕はこれでもれっきとした『男』だよ!?」
僕は呆れながらも姉ちゃんに反論した。
「え?なんでって、そこに可愛いめぐちゃんがいるからだよ?あのね、めぐちゃんはパッチリ瞳に二重で、真っ黒いサラサラのショートヘア。昔から女の子と間違えられることが多かったでしょ?今も時々町で女の子と間違えられてスカウトされたり、ナンパされたりするでしょ?それだけ可愛いってことなんだから、自信を持って良いんだよ!」
姉ちゃん持ち前の論理で、僕は一瞬納得しかけたが、全くもって納得できない論理だ。
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