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「部屋に泥棒入って困るようなもんでもあるわけ?」
伊崎は「はぁ」と大きなため息をついて、
「いや、いい。お前には何言っても無駄だった」
と、煙草の灰を携帯灰皿に落とした。
伊崎は煙草を吸うので、ベランダに出ることが多い。
だから私は、暇だったり話し相手が欲しかったりする時には、とりあえずベランダに出てパーテーションをノックした。
すると、5分の1くらいの確率で伊崎が顔を出すから、仕事の話や恋愛の話を聞いてもらっていた。
「てか、伊崎んちの冷蔵庫開けたら、酒と生ハムしか入ってなかったよ」
「あれ? 水くらいはなかったか?」
「なかった。てことは冷蔵庫開けてないってこと? 夕飯は外だった?」
「昼食が遅かったからそこまで腹へってないし、まぁ、今から酒と生ハムでも」
なんて不摂生な男だ。
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