【606号室 片桐 稜(かたぎり りょう)】

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「わかるわー。なんなら、最悪私がなってやろうか?」 「いや、稜は勘弁」 「なんでだよ」   冗談だったけれど、拒否されたらされたでムカつき、語気を荒げる。 「お前は今までの運が悪かっただけで、これからいい相手に巡り合うはずだからだよ。まだ若いし、未来は明るいよ」 「若いっつっても、来月もう27だよ」 「大丈夫だろ」 「責任とれよ? 言葉に」 「とるかよ、勘弁だって言ってるだろ」   ふっと笑った伊崎は、「じゃーな」と言って部屋に戻っていった。 私はもうしばらく夜風に当たることにして、手すりに手をかけ、周囲の家々の灯りや外灯、走る車のライトを眺める。
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