25669人が本棚に入れています
本棚に追加
/688ページ
この体温を他の人間にやりたくない。
たとえ、条件に見合う都合のいい相手だったとしても、感情が伴わない相手だったとしても、そんなの嫌だよ。
アンタのバカ笑いも、無精ひげも、言いたくないような過去も全部引き受けるからさ、『仕方ねぇなぁ』なんて言いながら、手荒でもいいから、ねぇ、もう1回触れてよ。
「おい、こら起きろ、稜」
「あ?」
目が覚めると、伊崎に覗き込まれていた。
見渡すと、ここが自分の部屋で、ソファーに横たわっていたということを知る。
「……ハハ。前にもあったね、こういうの」
「ハハ、じゃねーだろ。ちゃんと調整して飲めよ。引きずりながらでも、支えて連れ帰るのは難儀なんだぞ」
仁王立ちしながら説教する伊崎を見上げ、ゆっくりと体を起こして頭を押さえた私は、なんだ、結局さっきのは夢か、と自嘲する。
最初のコメントを投稿しよう!