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「ありがとね。愛してるよ、伊崎」
「はいはい、俺も愛してるよ。とにかく水飲め。これ、冷蔵庫の中にあったやつ」
ペットボトルの水を手渡され、いつかと同じようなやりとりを交わす。
冗談交じりの愛の言葉の交換は、本気でも本気じゃなくても、きっとこんなふうに流されてしまって終わりなのだろう。
「大丈夫か? 大丈夫なら帰るぞ。明日仕事だし」
水を飲んでひと息ついた私は、そう言って踵を返そうとする伊崎のTシャツの裾を掴んだ。
「ちょっとだけいいでしょ、久しぶりなんだから」
「この前ベランダで話しただろ」
「ベランダと部屋は違う」
「だから、だろ」
また似たような言い合いをするのか? と言わんばかりの顔の伊崎。
私は、ふたりきりなのに押しも引きもできないこの空気に、ため息まじりでうなだれる。
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