【606号室 片桐 稜(かたぎり りょう)】

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「でも、たまには衝動的になってもいいんじゃね?」 「…………」   それなのに……。 「そんなことで見限られたくないよ」 「衝動あっての恋愛だろ? さらけだしてみれば? 襲うくらいの勢いで」   腕組みをしながらケタケタ笑う伊崎。 衝動的になっていい、なんて簡単に言うなよ。 お前にさらけだせないから、このザマなんだろうが。 そうぶちまけたい気持ちを噛み殺し、 「大人になったんだから、そんなヘマはしない」 と震える唇を隠すように、口を拭った。   伊崎は「そーかよ」と言いながらつまらなさそうに伸びをし、喉の奥が見えるほどのでかい欠伸をした。 いよいよ帰る雰囲気を出して、「さてと」と横を向く。 「ん?」   けれども、棚に置いてあった何かに気付き、手に取った。
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