【607号室 伊崎 颯志(いさき そうし)】

2/81
25654人が本棚に入れています
本棚に追加
/688ページ
「はい、いつもの」   金曜の午後3時、仕事の合間に病院を訪れていた俺は、隣接する調剤薬局の窓口で、深水(ふかみ)から薬の袋を受け取る。 「ハ、お決まりのカクテルでも頼んだみたいな言い方だな」 「アハハハー、伊崎ったら面白い面白い」   棒読みで乾いた笑い声を上げているこの男は、同郷の幼馴染だ。 保育園から高校まで一緒で、大学でそれぞれ別れた後、たいして所縁もないこの土地で二人とも偶然就職が決まった。 つまり、生涯で物覚えがついてから約4年間しか離れていないド腐れ縁だ。 「眠れないんでちゅねー、あいかわらず」 「繊細な患者様にそんなことダイレクトに言っていいんですかね? 薬剤師さん」 「あらー、すみませんねぇ、課長さん」
/688ページ

最初のコメントを投稿しよう!