【607号室 伊崎 颯志(いさき そうし)】

3/81
25665人が本棚に入れています
本棚に追加
/688ページ
ノリが良くて、たまにオネエが入る深水は、これでも結婚していて、2歳の愛娘もひとりいる。 そのせいか、ここ数年は飲みに行く回数もめっきり減って、連絡はわりと取るものの、会うのは睡眠薬を受け取りに来るこの場所が一番多い。 「つーか、こんなに喋ってて大丈夫なのか? まぁ、今は他に客がいないけど」 「この時間すいてるし、今日は特にだし、いいんじゃね? ……て言ってたら、来た。はい、どけどけ、帰れ帰れ、うせろ」 「お前な」   互いに手を上げて別れ、俺は薬局を後にした。 外に出ると、8月に入っていよいよ強くなった日差しが肌を刺す。 コンクリートから立ち上る熱気が道路の白線を歪めているのを見ながら、左肩を上げてシャツの半袖で汗を拭い、駐車場へと急いだ。    
/688ページ

最初のコメントを投稿しよう!