【606号室 片桐 稜(かたぎり りょう)】

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「最後までする?」 「しない、って言ったら、止められるわけ?」 「止められるよ、大人だから。どうする?」 「ずるいな、私に委ねるとか」 「生物学的には一応女だからね、稜。合意の上じゃないと」 「うるさいな、ごちゃごちゃと。さっさとしろよ」 「お前、ホント俺の前ではいちだんと口悪ぃな」 初めて伊崎と寝たのは、穂乃ちゃんに彼氏を紹介された日の夜だった。 「ちょっと、ヒゲかゆいっていうか、痛い、伊崎」 「我慢しろよ。そもそも、お前が自分の部屋にいたくないっつーから、こんなことになってんだろ」 「わかったから、マウントは取んな。私を上にさせろ」 「なんでだよ」 「組み敷かれるのは趣味じゃない。負けた気になる」 「なんで勝負してんだよ。注文多いぞ、こら、貧乳」 「だから、ヒゲがいてーってば、おっさん」 色気なんて皆無で、こんなにも喋りながらなんて、ムードもへったくれもない。
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