【606号室 片桐 稜(かたぎり りょう)】

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驚いた顔を見せた柿本くんは、 「知ってたんですね、片桐さん」 と複雑そうな声を出した。 「まぁ」 「もしかして、みんなも知ってて……。あぁ、そうか、だからなんとなくみんなよそよそしかったんだ」   なにやら合点がいったらしく、ぶつぶつと独り言を言っている柿本くん。 というか、まず、社長と同じ柿本姓で隠し通せると思っていたのだろうか。 私はバレてしまったものはしょうがないと開き直り、自分の頭を掻きながら、 「遅かれ早かれ、ってやつだよ。いいじゃん、柿本くん、鼻にかけることもないし謙虚でやる気もあるから、みんなから高評価だよ。接し方に戸惑ってる人もいるだろうけど、柿本くんのこと嫌いな人はまずいないと思うし」 と励ます。 「ほ……本当ですか?」 「だって、資料室にこもってたのも、社長に取引先とか顧客データを頭に入れろ、とかなんとか言われて、頑張ってたからじゃないの? もしかしてだけど」
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