【607号室 伊崎 颯志(いさき そうし)】

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でかい枕を抱いて、目を逸らしながらしょうもない理由を羅列して、そんなんで納得させられるとでも思っているのか。 「なんでだか……伊崎と寝ると熟睡できるんだよ」   モゴモゴとそう言い、枕に顔をうずめんばかりに照れて訴える稜。 なんなんだ、このイケメン乙女は。 俺は頭を押さえて壁に寄り掛かり、盛大なため息をつく。 そして、ぼそりと、 「……同じだからタチ悪ぃ」 と呟いた。 「え?」 「好きにしろ」   手を伸ばして鍵をかけ、部屋へと踵を返す。 利害一致の隣人は、 「ほら、エアコン代の節約にもなるしさ。なんなら電気代算出して、折半してもいいし」 と、わけのわからん言い訳をまだ続けながら、後ろからついてくる。   寝室の扉を開けた俺は、 「いいから、寝るぞ」 と言って、稜を中へと押し込んだ。    
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