【606号室 片桐 稜(かたぎり りょう)】

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「だから、本気じゃなくて、アイドルに対するようなアレだよ。それにもし本当に好きになっても、恋愛は妄想だけにとどめて、動くつもりはない。もう懲りたんだ。そうじゃなくても同じ会社だし、社長の息子だし、下手を打つつもりはない」 「それ、穂乃ちゃんの時にも言ってたよな? 同じマンションの同じ階だし、なにより同性だし、これからも仲良くしたいから下手を打つつもりはないって」 「何が悪い?」 「いや、悪かねーけど? 稜の勝手だから」   伊崎は喉仏を上下させて大きいひと口を飲み、これ見よがしなため息をついた。 「まぁ、振られまくるわ、付き合えても長続きしねーわを繰り返してたら、そうなるか」 「うるさいな、伊崎もどうせ長続きしたことないだろ?」   腕組みをしながら悪態をつくと、 「あるよ」 との返答。 私は眉間のシワをいっそう深めた。
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