【606号室 片桐 稜(かたぎり りょう)】

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「泣くなって」 「だって、穂乃ちゃんが605でエッチしてたらと思うと」 「いやー、あの少年はなんだかんだで段階踏むんじゃね?」 「若さは理性を裏切る」 「まー言えてるな。ハタチ前後はサルだから……って、いてっ! 叩くなよ。自分から言っといて。あーあー、無様な顔」 「ほっとけ」 「なんなら、ふたつ隣の部屋に聞こえるほど声出せば?」 「アホか」 そう言うと、伊崎は口角を吊り上げ、穂乃ちゃんとでは到底想像もできないような荒いキスをした。 煙草と酒の味がねじりこまれ、口内に入ってくる。 「俺を穂乃ちゃんだと思っていいぞ」 「思えるかよ、こんな重たいオヤジ」 太いその腕に噛みついてやろうかと、伊崎を思いきり睨む。 「仕方ねーな。じゃあ今日だけは攻守交替してやるから、上乗れ」 「今日だけは、って次があるわけ?」 「隣室のよしみだろ」  
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