【606号室 片桐 稜(かたぎり りょう)】

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「なに? これ」 「関数の本、応用編。多分これ見たら、今やったのはできる」 「教えてくれないの?」   手渡された本を受け取った私は、その表紙を凝視した後で、伊崎の顔へ視線を戻す。 「自分で調べてやってみろ。じゃねーと、頭に残らねーだろ? 身につかねぇよ」 「ケチ」 「実践あるのみ。勉強するいい機会だと思えよ」   そういえばそうだった。 私も椎野ちゃんに対して、まったく同じことを思ったんだった。 思い返しつつも、酔っぱらってるからか、ふくれっ面で伊崎に頭突きする。 私は腰を下ろしていたけれど、伊崎はしゃがんだだけの姿勢だったから、不意を食らって後ろにのけぞり、手をついた。 そのことで、床に置かれていたシーリングライトのリモコンを手で踏む伊崎。
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