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「……まぁ、いろいろありますよね、生きていれば」
こういうときは、そっとしておくに限る。
私ならそうだと思い、それだけ言ってエレベーターへ歩き出すと、
「あ、待って。私も乗るから」
と追いかけてくる片桐さん。
一緒に乗りこみ、
「平橋さん、大人ですよね」
などと話しかけてくる。
そんな“泣きました”宣言しているような顔をして、1、2度しか話したことのない人間に寄っていくなんて、私からしたら考えられない。
「私、大人になりきれません」
「そうですか」
「バカです」
6階に着いて、ドアが開く。
通路に出た私は、
「たしかに、所構わず涙を流す人間は、大人とは言い難いですね」
と伝えた。
彼女はまた、新しい涙を流していたのだ。
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