【601号室 平橋 小夏(ひらはし こなつ)】

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「わかってます、自分が一番。上手な別れ方とか、逆にうまく立ち回ってキープするとか、そんな大人なことできないお子様なんだって」 徒歩で数分の距離にある居酒屋で、話ながらまた目に涙を浮かべ、何度も鼻をすする片桐さん。 彼女の話をひととおり聞いた私は、その別れた年下彼氏のほうが伊崎さんよりもはるかにいいのに、と思いつつも、スイッチひとつで簡単に切り替えられない感情があることに痛いほど共感する。 とにもかくにも、友人でもなんでもない私に、よくここまであけっぴろげに話して泣くことができるな。 きれいな顔と体を持っていて、何不自由なさそうな彼女。 悩み事があるのは当たり前だとして、感情のままに涙を流して他人に頼れる術を備えているなんて、本当に……。 「羨ましい」
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