【601号室 平橋 小夏(ひらはし こなつ)】

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壁には、ビールのポスターと、名言が長々と書かれた貼り紙。 その文字の羅列は頭に入ってこない。 「自分の感情に忠実で、涙がちゃんと出せて、素性のわからない私なんかにそこまで打ち明けられて。不器用だけど、きちんとアウトプットができてるから大丈夫よ。どう転んだとしても」   私も相談してみようか。 心の中から出て行ってくれない人がいて、その人には別に大事な人がいて、先日そのふたりを目の当たりにしたんですよ、って。 次に行きたくても、ちゃんと悲しんだり泣いたりできないから、なかなか感情の区切りがつかないんですよ、って。 誰かに甘やかされたくても、甘え方がわからないんですよ、って。   ……くだらない。   心を整理して並べると、あまりのくだらなさにあきれてしまい、ゆっくりお酒を口に運ぶ。
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