【601号室 平橋 小夏(ひらはし こなつ)】

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第一、片桐さんこそ心に余裕がない今、自分の話なんてできるはずがない。 ほら、こんなに目が腫れるくらい、私にとっては理解に苦しむ伊崎さんが好きなのだもの。   話を続けると、彼女は伊崎さんに想いを伝える気はなく、このまま友人関係を続けるとのことだった。 拒絶されることが確実だから、そこで繋がりを失いたくないらしい。   でも、こんな顔をしていたら、どのみち関係が大きく揺らぐのは時間の問題のような気がする。 「正しいアドバイスは、きちんと玉砕して引っ越して、新しい恋とか他に打ち込めることを探しましょう、なんでしょうね」   言いながら、自分の言葉にぎりぎりと心臓を絞られる。 区切りがつけられない私こそ“玉砕”が必要だというのに、なにを偉そうに言っているのだろう。
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