【601号室 平橋 小夏(ひらはし こなつ)】

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「あれ? 稜じゃん」 「……伊崎だ」   片桐さんの声に店の入口を振り返ると、こちらを見ている3人の男女が目に入った。 ひとりは伊崎さん、そして……あぁ、あのカップルだ。 「なんだよ、稜。平橋さんとサシで飲む仲になったのか? そういうことなら俺も誘えよ」   ニタニタしながらこちらへ来た伊崎さんに、 「うるさい。お前も連れがふたりもいるじゃないか」 と返す片桐さん。   彼女の心境を察するも、言うまでもない。 案の定、目がまた潤んできている。 ほら、時間の問題以外のなにものでもない。   それに気付いているのかいないのか、伊崎さんはこちらに向かって、 「あいつらのこと、見覚えあるでしょ? 平橋さん」 と言ってきた。 「一度部屋の前の通路で会ってるもんね。ふたりともビビリだから、平橋さんの顔を見た途端、硬直してたよ」
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