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「あれ? 稜じゃん」
「……伊崎だ」
片桐さんの声に店の入口を振り返ると、こちらを見ている3人の男女が目に入った。
ひとりは伊崎さん、そして……あぁ、あのカップルだ。
「なんだよ、稜。平橋さんとサシで飲む仲になったのか? そういうことなら俺も誘えよ」
ニタニタしながらこちらへ来た伊崎さんに、
「うるさい。お前も連れがふたりもいるじゃないか」
と返す片桐さん。
彼女の心境を察するも、言うまでもない。
案の定、目がまた潤んできている。
ほら、時間の問題以外のなにものでもない。
それに気付いているのかいないのか、伊崎さんはこちらに向かって、
「あいつらのこと、見覚えあるでしょ? 平橋さん」
と言ってきた。
「一度部屋の前の通路で会ってるもんね。ふたりともビビリだから、平橋さんの顔を見た途端、硬直してたよ」
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