【601号室 平橋 小夏(ひらはし こなつ)】

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2週間後。 「平橋、ちょっと来い」   終業間際、経理部に入ってきた社長が、いささか不機嫌そうな声で私の名を呼ぶ。 また社長お得意の突発的な会議やら研修やらだと思っていたらしい周りの社員たちは、自分たちには害のないことだと知ると、ほっとしたような顔をして止めていた手を再開させた。 「……はい」   初老の社長、その固められたグレイヘアを見ながら、後についていく。   こういう呼び出しは、たまにある。 社長室でマンツーマンで話をするのだけれど、だいたい部下の教育や会社経営について思うことはないかと、率直な意見を求められるのだ。 一目置いてくれているのかどうか知らないけれど、そこで意見を出すと、結局私がその意見に対する社長発案の対策を任される。
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