【606号室 片桐 稜(かたぎり りょう)】

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「稜、Jホテルからデータ届いてるから」 「あぁ、器のデザインの件だわ。すぐ電話で折り返すよ。てか、いくら同期だからっていい加減苗字呼びに慣れろよ、山木(やまき)」 「ハハ、悪い悪い。片桐(かたぎり)」   気の置けない仲の同僚、山木勇太(ゆうた)が手を上げて去っていくのを見送った私は、デスクに腰かけ、会社の電話の受話器を手に取る。 すると今度は反対側から、 「片桐さん、すみません、T工場の担当さんがサンプルの件で話をしたいって、今電話きてて」 と事務の女の子、椎野素子(しいのもとこ)から言われ、回転椅子をくるりとそちらへ向ける。 「わかった、何番?」 「2番です」 「了解。もしもし、大変お待たせしました。お世話になっております、片桐ですが」
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