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私が602号室に逃げ込んで空っぽな自分の居場所を求めたように、誰もが今の自分を脱いで無条件で癒されたい時はあるのだろう。
でも、そんな自分を受け入れて甘やかしてくれるあたたかい部屋のような人がいてくれたら……。
「なんだ?」
「……いえ、素敵な顔だな、と」
「皮肉か?」
善さんのただでさえ仏頂面の眉間にシワが寄り、もっと怖い顔になる。
でも、私は知っている。
善さんの中身は、その名前そのままの人だってことを。
私は笑いながら、見上げた顔を戻して頭をまた彼の胸に寄せた。
「こんなふうに一緒にいて甘やかし合っていては、ふたりしてダメになっちゃいますね」
そんなことを言うと、ちょっと沈黙ができ、今度はふわりとうしろから抱きしめられる。
「……そうだな、ずっと一緒にいて、ふたりしてダメになるのもいいかもしれない」
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