【601号室 平橋 小夏(ひらはし こなつ)】

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「どうするか? 断ってもいいが……」   きっと、あのボヤ騒ぎの日の私のままだったら、当たり前のように断るのだろう。 他人に関わることが億劫で、関わったことで面倒ごとが増えるのが嫌で。   善さんに対して以外は基本的には今でもそうだけれど、ほんの少し、繋がり合うことも悪くないと思えてきたのも事実だ。 ひとりぼっちなら同じ円を回るだけでも、人と関わることで繋ぎ目が増え、螺旋状にわずかでも上に進めているのかもしれない。   善さんを見ると、ぶつくさ言ってはいるものの、ほんの少し嬉しそうにも見えた。 そんなわずかな表情の違いを見分けられるようになったことにも、嬉しさが胸ににじむ。   私はソファーから腰を上げて、善さんに向き合った。 そして、 「行きましょうか」 と微笑んだ。 《601号室編 おわり》
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