25689人が本棚に入れています
本棚に追加
「どうするか? 断ってもいいが……」
きっと、あのボヤ騒ぎの日の私のままだったら、当たり前のように断るのだろう。
他人に関わることが億劫で、関わったことで面倒ごとが増えるのが嫌で。
善さんに対して以外は基本的には今でもそうだけれど、ほんの少し、繋がり合うことも悪くないと思えてきたのも事実だ。
ひとりぼっちなら同じ円を回るだけでも、人と関わることで繋ぎ目が増え、螺旋状にわずかでも上に進めているのかもしれない。
善さんを見ると、ぶつくさ言ってはいるものの、ほんの少し嬉しそうにも見えた。
そんなわずかな表情の違いを見分けられるようになったことにも、嬉しさが胸ににじむ。
私はソファーから腰を上げて、善さんに向き合った。
そして、
「行きましょうか」
と微笑んだ。
《601号室編 おわり》
最初のコメントを投稿しよう!