【6階の厄介な住人たち】

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『ただ、相性の問題だったんだと思います。だって私、善さんの上辺だけの優しさじゃないところ、尊敬しています。偽りなく本音で話してくれているってこともわかりますし、打算でも動いてない。だから、すごく信頼できるし、安心します』   そして、図らずも心を動かされるようになったのは、いつからだろう。癒されているとの言葉にこちらこそだと思った途端、胸に流れ込んできた温かい何かに目頭が熱くなり、それを悟られぬように必死だった。   自分が他の人間と同じようにできないことが多いのは、自覚している。人の意をくむことができず、強面の変わり者だと烙印を押され、誤解があったとしても、それを誤解だと弁明することすら諦めていた。   そんな不器用を体現したような自分を、こうして受け入れてくれる人間がいるとは……。 「善さん? 着きましたよ」   小夏の声に現実に戻された私は、あたりを見た。薄暗い道に、数軒並んだ飲食店から光がこぼれている。私たちが立ち止まった店には、赤いのれんに大きく太い文字で“焼肉”と書かれていた。以前、小夏と一緒に来た店だ。
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