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「でさ、これがまた可愛い顔してるし、慕ってくれるもんだから、強く言えないっていうかなんつーか」
「へー、タイプだと」
「まーね。撫でまわしたくなるよ」
「ハハ。穂乃ちゃんに失恋して落ち込んでるかと思えば、切り替え早ぇな」
「立ち直ってないよ。抉るな、傷を」
ケタケタと笑う伊崎は、煙草の煙を6階のベランダから空へと燻らせる。
互いにベランダの手すりに手をかけ、わずかに身を乗り出して話しているため、互いの顔がよく見える。
今、私たちはそれぞれの部屋のベランダで、パーテーションを隔てて話していた。
「つーか、稜、お前さ、いくらなんでも集合ポストに部屋の鍵返すなよ」
「なんで? 施錠してあるから大丈夫でしょ」
「簡単なダイヤル式だし、郵便物入れる開口部分から盗まれたらどうすんだ」
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