【606号室 片桐 稜(かたぎり りょう)】

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「朝食とかいつもどうしてんの?」 「コーヒー」 「昼しかまともなもの食べてないじゃん。不健康代表だな」 「ハハ」   初めて顔を合わしたのは、去年のボヤ騒ぎの時だったから、かれこれもう半年近く。 伊崎とは、こんな感じで他愛のない話をしたり飲みに行ったり。 そうこうしながら、まるで家族のような気楽な間柄になった。 「そういえば、伊崎の部屋に行ったの、昨夜初めてだったな」 「あー、そういや、体大丈夫か?」 「おかげさまで筋肉痛始まりかけてる」 「しっかし、お前体硬すぎ。運動しろよ」   まるで昨夜のセックスはスポーツだったかのような会話。 伊崎相手だと下手な気まずさがないから楽だ。   私は手すりに両手をかけ、軽く斜め懸垂をするようなポーズを取った。
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