【607号室 伊崎 颯志(いさき そうし)】

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「なんで?」   メシも、その後片付けも終わり、風呂に入るからと606号室に帰ったはずの稜が、また戻ってきた。 ラフな家着で、おまけに自分の枕まで抱えて玄関に突っ立っている。 寝る気満々だ。 「夜中に不審者が来たら、伊崎を助けられないだろ」 「冗談だよ、あれは。大丈夫だから」 「目覚まし時計を止める時に、寝ぼけて利き手を使ったら悪化する」 「左手使うよ。右手を使ったとしても、そのくらいじゃ悪化しねぇし」 「それに……」 「それに?」 「い……言っただろ、柿本くんのことを忘れられなくて不眠症だって。慰めるって言ったんだから、添い寝くらいさせろ。なにもしなくていいから」 「…………」   なんて無茶苦茶な言い分だ。
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