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ろくに回らない思考の中で、無理矢理引きずりだされた結月の本心が、素直に口をついて出た。
「ッ、もッちぃ! きもちっ! からぁ……ッ」
「……そうか」
欲に掠れながらも安堵するような声を落とされ、結月の胸中に代えがたい愛おしさと、哀しみが溢れだす。
「きもちっ、くて、ごめん……ッ! ごめ、……んんッ!」
結月があの『仕事』をしていなければ、仁志と出会う事はなかっただろう。
例え後悔はなかったとしても、やはり、奥で受け入れる快楽を知っている身体を抱かせている事が、酷く申し訳なく思えた。
もしも仁志が結月の『初めて』だったならば、きっとこんなにも淫猥に乱れ啼く事はなかった筈だ。
滲む涙を見られたくなくて結月が腕で目元を覆うと、動きを止めた仁志が「結月」と呼んだ。
「こっちを見ろ、結月」
「んっ、や、ぁ……」
「結月」
涙を拭うように頬を包む掌の温かさに、結月はソロリと腕を外して怯えた瞳で見上げた。
見下ろす仁志の顔には呆れも怒りもなく、ただ、真剣な双眸で結月を見据える。
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