第九章

16/23
419人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
「よく見ろ、結月。お前が今、感じているのは、『男』に抱かれているからではなく、『俺』に抱かれているからだろう?」 「っ!」 「何も謝る事はない。感じるのなら、素直に感じておけ」 「……ふっ」  どうしてこんなにも、優しく救い上げてくれるのだろう。  もっと、強く責めてくれてもいいのに、仁志は結月の心を丸ごと包み込んでしまう。  愛おしくて、愛おしくて、数え切れない程の『好き』が結月の劣等感を押し込んで、ただ仁志への想いに涙が溢れる。 「……っ、好き」 「……俺もだ。何よりもお前が大切だ、結月」  宥めるようなキスが、ホワリと心を温かくする。  不意に、仁志の腰が揺らめいた。感覚に結月が小さく喘ぐと、仁志は妖しげに双眸を細め、ニヤリと口角を上げた。 「それとな、結月。覚えておけ」 「んっ……な、なに?」 「ベッドの上で、過去の話はマナー違反だ。妬かせるだけだからな。……せいぜい後悔しろ」 「ッんあ!?」  一気に激しさを取り戻した腰が、容赦なく結月の奥を攻め立てる。  考える隙など微塵も与えない動きに、結月はただ、閉じれない口で感じるままに啼いた。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!