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「……さすが、逸見さんだな」
ポツリと呟いた結月に、仁志が眉根を寄せる。
「……嫌なのか」
「…………」
無くしそうだし、と言いかけたのを喉元で止めて、結月は薄く息を吐き出した。
充実感に満たされている今だからこそ、素直に、伝えようと思った。
「……嬉しいよ。今のままでも十分だけど、やっぱり、そーゆー目に見えるモノがあると、安心するし」
「なら……」
「けど、さ。例えおれ達がどんなに『それでいい』って思っても、いくらおれ達の大切な人達が認めてくれても、この国は受け入れてくれないし、許してくれないでしょ」
「…………」
「おれはいいよ? けど、あんたは違う。社会っていうこの国の基盤の中で、大切な一角を担ってる人間じゃん。……指輪なんてつけたら、相手は誰だ、式はいつだって大勢に囲まれるんだろ? それが、『普通』だから。……どうすんの。黙っていれば、不審に思ったヤツが『調べる』かもしれないし。そんなコトになったら、おれは本当に、只のお荷物になっちゃうじゃん」
「っ、俺はお前を、そんな風に思った事はない」
「知ってるよ。あんたのそーゆートコ、大好きだもん。けどさ、やっぱりおれは、あんたの『弱点』なんだよ。……それをわかってても、側にいたいってワガママ言ってんだから、おれも結構図太いんだけど」
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