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今更手放せと言われても、それは無理な相談だ。それだけ、欲が出てきてしまった。この側に在りたいと。
結月は仁志の胸元に額を寄せた。ちゃんと伝わって欲しいと願いながら。
「……だから、『嫌』、かな。おれは、ずっとあんたの隣にいたいって思うし、誰かに邪魔されんのもイヤだ」
例えば仁志が、只のサラリーマンだったなら、例えば結月が、権力者だったなら。
いくつか別の可能性が過ぎったが、それでもきっと、結月は同じ選択をするだろう。
無粋な誰かに、不要な邪魔はされたくない。一番大きいのは、そこだからだ。
沈黙を破ったのは、仁志だった。
「……今度、カタログをいくつか持ってくる。一緒に選べ」
結月は耳を疑った。
「ちょっと、おれの話し聞いてた?」
「指輪を買うこと自体は、『嬉しい』んだろう?」
「っ」
「……外では付けない。『家』にいる時だけだ。それなら、誰の目にも触れないのだから、問題ないだろう?」
「! い、つみさんが、居るじゃん」
「それは今更だろう。……アイツの場合、むしろ喜んで店の人間を手配しそうだがな」
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