第九章

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 言われて結月も逡巡して、浮かんでしまった光景に頭痛を覚えた。  確かに、どうにも仁志に甘い逸見なら「結月さんが良いと言うのでしたら」と、嬉しげな微笑みで数人引き連れてきそうだ。 「……そんなに、欲しいの?」 「……気持ちを疑うつもりも、疑わせるつもりもないが、あの特別感に、憧れがある」 「…………」  そこまで言うのなら仕方ない。  結月だって、誓った証が互いの指で揃って光る様に、憧れがない訳じゃない。  こんなにも満たされていていいのかと微かな不安が過るが、強く見つめる仁志を見ると、それでいいような気がしてくる。 「……お願いだから、カタログにして」 「わかってる」  言って仁志は約束だというように、結月の薬指に触れるだけのキスをした。  そのまま降りてきた唇を受け止めて、触れるだけで離れた気配に、結月はそっと瞼を持ち上げた。  歓喜を宿す仁志の瞳は、甘く緩められている。
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