第九章

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 ともかく、だ。仁志は結月にそういう意図では、触れてこない。  一度、「どこでヌいているの?」と尋ねた事があったが、思いっきり叩かれてそのままだ。  痛かった。頭もだけど、心もだ。 (浮気……は、ないよなぁ……。おれに魅力が足りないとか?)  愛おしく想う気持ちと、性欲として求める対象は異なる場合もあると聞いた事がある。  やっぱり男の身体では駄目だったのではないかと、結月は密かに悩んでいた。  だからこそ、今日なのだ。  初めての交際に胸躍る女学生のように、一ヶ月という節目に浮かれている訳ではないが、こうした踏み込みは、節目こそ丁度いいのではないかと思っていた。  寝支度を済ませ、すっかり慣れてしまった広々としたベッドに横たえ、隣の仁志がサイドボードの電灯を消してからが、結月の『勝負所』だった。 「おやすみ、結月」  額にそっと触れた唇が離れていく様を見上げながら、結月は強請るように身体をすり寄せ、仁志の双眸を見つめる。  すると、キッチリと意図を拾った顔が優しく寄せられ、待ち望んだ唇が柔く押し当てられる。離れるそれを追いかけ自身からも重ねると、触れたそこを軽く擦り合わされ、結月はたまらず仁志の上唇を柔く食んだ。
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