第九章

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 返すように食まれた結月の下唇に、熱い舌先が辿るように這う。腹の底から湧き出た快感に薄く開いた隙間から入りこみ、更に深く絡め取ろうと、角度を変えては結月の口内を蹂躙した。  気持ちいい。霞む脳に、甘く漏れ出る自身の声と、混ざり合う互いの水音が木霊する。  もっと、もっとと欲が膨らんで、結月が無意識に腰を捩ると、気づいた仁志は唇を放し、労るような軽いキスを落とした。 「……おやすみ」  また、だ。  やっぱり仁志は、これ以上を進める気はないらしい。こっそり盗み見た双眸には、結月と同じく欲が滲んでいた。  結月もいつもならこの瞳に後ろ髪をひかれつつもこのまま「おやすみ」と引き下がり、密やかな深呼吸と共に膨らんだ欲を散漫させるべく奮闘するのだが、今日は覚悟を決めていた。  グッと腕を突っ張って上体を起こすと、不思議に首を傾げた仁志の肩を押し、仰向けに寝転ばせる。  戸惑いに抵抗を渋っているウチに腰を跨ぐように乗り上げ、結月は仁志を上から見下ろした。 「……結月?」  仁志が訝しげに眉根を寄せる。  結月は緊張と期待からドクドクと高鳴る心臓にゴクリと息を呑むと、意を決して仁志の唇に再び自身のそれを重ねた。
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