君が好き

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 家は新築されていた。真っ新だ。 だが、庭だけはそのまま残してあった。昔からある木々や植物はそのままだ。 ただ、もう縁側は無かった。 庭先の柵の前に立って、中学生になる啓太が女の子と話しをしていた。 テレビのバラエティー番組の話だ。 女の子はセーラー服がよく似合う、とても可愛い子で、笑顔で啓太を真っすぐ見つめていた。 「啓ちゃん、啓ちゃん」 庭につながるガラス扉が開いて、美也子が顔を覗かせた。 「お母さん、今から買い物に行くからね」 「…うん」 啓太は面倒臭そうに返事をした。 「あぁ、律子ちゃん、」 「こんにちは」 「どうしたの?今日学校行ってたの?」 「はい、部活で…」 「あぁ、そう」 美也子は愛想笑いをすると、そのまま奥に消えた。
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